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運賃等値上げ交渉と残業代請求セミナー
想定外の残業代請求を防止するために賃金制度を改定し、完全歩合または一部歩合であることを明確にしたいというご相談・ご依頼を多数お受けしています。
しかし、こうした制度改定(就業規則改訂)をする際には従業員から同意を得る必要があります。
スムーズに制度改定を進めるためにも、人手不足解消のためにも、賃金UPも実現したいです。
賃金UPの原資を確保するためにも、運賃等の値上げが必要です。
そこで、残業代請求対策と運賃等値上げ交渉のポイントを解説するセミナーを実施しました。
希望される方には動画視聴URLをお送りしますので、下記よりお申し込みください。
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運賃の値上げ交渉が不可欠な理由
運転手を採用するためには、賃上げが不可欠であり、その原資が必要
運送業界も高齢化が進み、ドライバーの平均年齢は約50歳です。皆様の会社でも、60代のドライバ―が普通に活躍されていることでしょう。他方で、若いドライバーを採用することができないと悩んでいらっしゃるという声をよくお聞きします。
顧問先に採用が難しい理由をお尋ねすると、皆様口を揃えて、「賃金もあるけど、労働時間(休日を含む)が問題」とおっしゃいます。
十分な賃金を支払い、労働時間を短縮するためには、適切な運賃で運行する必要があります。
未払賃金請求権(残業代請求権)の時効期間が延長された
残念ながら残業代を適正に支払っていない運送会社が見受けられます。
歩合給や運行手当の支払いを理由に残業代を支給していない場合、労働時間の認定が適切ではない場合、固定残業制を採用しているが超過分の残業代を支払っていない場合などです。多くの場合も法令に違反している自覚がないのですが、自覚されている経営者の方も、残業代を労働者が主張するとおりに支払ったら赤字の運行ばかりで倒産してしまうと仰ります。
しかし、残業代請求を受けるリスクは、そのまま倒産のリスクになります。未払賃金請求権の時効が法改正により2020年4月から2年から3年になり、請求を受ける金額は1.5倍になり、さらに今後5年に延長される見込みです。中長距離トラックドライバーが弁護士に依頼して残業代請求を主張する場合、1000万円前後となることが多いです。
残業代請求を受けるリスクを回避するためには、法令を守って賃金を支払うしかありません。その原資を確保するためには、運賃等を値上げしてもらうしかありません。
2023年4月から1か月60時間超の残業時間については、割増率が25%アップ
私の経験上、中小企業の中長距離運行のドライバーは、ほとんどが月60時間以上働いています。そのため、2023年4月1日から、ほとんどの運送会社で人件費負担も増加することになります。
例えば、1時間あたりの賃金2000円のドライバーの1ヵ月の残業時間が80時間の場合、20時間分の残業代の割増率が25%上がることになり、1か月当たり人件費が1万円増額することになります。
2000円×1.25×80時間=20万円
(2000円×1.25×60時間)+(2000円×1.50×20時間)=21万円
このような人件費の増額については、運賃に反映させなければ利益が減ってしまいます。
2024年には労働時間の上限規制(960時間)が適用される
働き方改革により労働時間の上限規制が設けられました。運送業については2024年3月31日まで適用が猶予されていますが、2024年4月1日からは上限時間が960時間になります。年間960時間超の長時間労働をさせた場合には、刑事罰を受けることになります。
年間960時間は、1か月平均80時間です。中小企業の運送会社では、長距離を中心に、少なくないドライバーの1か月の残業時間が80時間を超えるのが現実です。
ドライバーの労働時間を削減するために様々な改革が必要ですが、ドライバーが1か月間に稼働する時間を減らさなければならないことは間違いありません。そうすると、通常は1台のトラックが稼働する時間も減ることになるでしょう。
トラックが稼働できる時間が減れば、原価率は上がることになります。したがって、運賃の単価も上げなければ、これまでと同様の利益を確保することができないのです。
燃料費の高騰
為替相場の変動や地域紛争・戦争などの発生によって、軽油の価格が急激に上昇する場合があることは、皆さんが身をもって体験されていることです。
例えば、2012年12月25日時点の給油所小売価格調査による軽油価格は127.8円でした。しかし、2022年12月26日の価格は148円です。約20円も高騰しています。2022年6月27日には154.7円まで急上昇したこともありました。
このように軽油価格は、ここ10年単位で見ても上昇傾向にあり、今後も価格が急激に下がるとは考えにくく、どちらかと言えば上昇する可能性が高いのではないでしょうか。
いずれにしても、こうした燃料費の高騰も運賃等に反映されなければ、仮に、過去に適正な運賃を設定していたとしても、外部的な要因によって簡単に利益がなくなってしまいます。
そのため、燃料費高騰後の運賃等の値上げまたは燃料サーチャージ制導入の必要性があります。
まとめ
適正な賃金(残業代を含む)を支払っていくためにも、運賃等を適正な金額にすべく値上げ交渉する必要があるというお話をさせて頂くと、経営者の方からは、荷主・元請運行事業者との関係上、「賃上げ交渉は現実的ではない」「運賃の見直しは随時してもらっているから不要だ」などのご意見をお聞きすることが多いです。
しかし、中小の運送事業社様から多くのご相談・ご依頼を受けた結果、法令を守って運行を続けるためには、運賃の値上げが必要だと実感しています。
儲けが少ないという理由ではなく、法令を守って経営するために必要という理由で運賃値上げ交渉をしてみてはいかがでしょうか。
少なくとも、現在の運賃が適正か(原価との関係)、運行だけではなく荷役作業や待機時間等への対価は支払われているか、運転手に対して適正な残業代を支払えているか等については検討すべきでしょう。
運賃を支払う側の荷主・元請運行事業者からすれば、運賃を上げることで利益が減少しますから、通常は積極的に行いません。受託者である運送事業者から具体的な根拠を持って運賃の値上げを要求されなければ、検討すらしないのが現実でしょう。仮に、随時運賃を値上げしていたとしても、それは本来あるべき運賃より不利なものである可能性が高いです。
もちろん、良心的な荷主・元請運行事業者により既に十分な運賃が設定されている場合、取引先や競合との関係上、値上げ交渉をすることによって、取引を打ち切られるリスクがあるような場合には、値上げ交渉をする必要はありません。
その場合でも、自社の原価を計算し、各運行を受託するかしないかを判断できる材料を持っておくことは必要ですし、燃料費の高騰による原価率の上昇などについて、荷主に情報を提供して理解してもらうことは価値があります。
以下では、運賃等の値上げ交渉のポイントについて簡単に説明いたします。
運賃の値上げ交渉の方法
運賃表などを作成し、算定過程を明確にすること
小規模な運送会社では、著しく低い運賃・料金を一方的に設定されているケースが非常に多いです。運賃等請求の手続きも、空欄の請求書を送付すると、荷主・元請運行事業者から具体的な請求金額が記載された請求書が戻ってきて、そのとおりに請求するしかなく、具体的に運賃がどのように計算されているか確認できないといったケースもよく聞きます。
まずは基本的な運賃について書面で合意し、毎回の請求手続きにおいて、どのような計算過程を経て運賃が算出されているか確認できるように説明を求めることが必要です。これは対等な商取引に置いて当然なことだと思うのですが、現実的には取引先に遠慮して、こうした基本的な事項すらできていないケースがあります。
標準的な運賃に基づき交渉する方法
国土交通省運輸局は、一般貨物自動車運送事業における標準的な運賃を公開しています。この標準的な運賃との比較に基づき、価格交渉をすることも考えられます。
しかし、あくまでも標準的な運賃であり、それぞれの運行の実態は様々であるため、荷主や元請けからは、標準的な運賃に合わせなければならない理由は無いとして取り合ってもらえないことが少なくありません。
原価を計算して交渉する方法
現在の運賃が適正ではないとして値上げをお願いするためには、具体的な根拠が必要です。
その1つになるのは原価計算です。
例えば、距離制運賃の場合の各運行の原価は、以下の計算式で算出することができます。
1.1キロメートルあたりの変動費×走行距離
2.1時間あたりの固定費×所定内労働時間
3.1時間あたり、基準外人件費×所定外労働時間
時間制運賃の場合には、以下の計算式で原価を計算することができます。
1.1キロメートルあたりの変動費×基礎走行距離
2.1時間あたり固定費×基礎作業時間
このように、原価を計算することによって、具体的な数値に基づき、運賃の値上げを交渉することができます。
また、運賃の交渉をするまでもなく、原価割れする運行を受託しない判断をすることができ、利益率を改善させることができます。
したがって原価計算は必ず行うべきです。当事務所では、運賃等値上げ交渉のサポートの中で、原価計算を行い、適正な運賃を提案いたします。
燃料費の高騰
上記でも説明したとおり、軽油価格は上昇傾向にあり、こうした燃料費の高騰分を価格に反映させたいところです。
軽油価格の変動については客観的な統計資料が公開されており、こうした資料に基づき、燃料費の高騰分を運賃に反映してもらうように交渉する必要があります。
しかし、この場合も、燃料費の高騰が原価にどのような影響を及ぼしているのか、具体的に説明できなければ、どれだけ運賃をあげれば適正であるかが判断できません。こうした理由からも、先ほど述べたとおり原価計算が必要になります。
急激に燃料が高騰したり下落したりすることがあり、そのたびに運賃を改定する事は現実的には難しいです。
そのため、燃料費の高騰に対応するためには、燃料サーチャージ制を導入することをお勧めします。荷主・元請運行事業者にとっても、燃料費が下落した場合に運賃が高止まりするリスクを回避することができるメリットがあります。
燃料サーチャージ制を導入するためには、各トラックの燃費を算出する必要があります。最近はほとんどの運送会社においてデジタコが導入されていることから、基礎となるデータは社内にあるはずです。原価計算と比べれば、煩雑な作業ではありませんが、ご要望に応じて弊所で燃料サーチャージ導入をサポートさせていただきます。
荷主・元請運行事業者には多数の取引先がいるため、自社だけ燃料サーチャージ制を受け入れてくれる可能性はないと仰る経営者の方も多いです。結果として燃料サーチャージ制を導入してくれなくとも、燃料費が高騰することによる原価への影響など、具体的な数値に基づいて説明することにより問題意識を持ってもらうだけでも価値があります。
運賃の価格交渉は、喧嘩ではありません。あくまでもお願いとして、具体的な根拠に基づき説明すると考えてはいかがでしょうか。
付帯業務に対する対価
運賃は基本的にはトラックで荷物を運ぶことに対する対価です。荷役作業等の付帯業務に対して適正な対価が支払われているか確認しましょう。
意外と作業の内容が明確になっておらず、運転手ごとに違う作業をしていたり、作業への対価を全く支払ってもらっていない場合もあります。まずは業務内容を明確にすることが必要です。そして対価を支払ってもらっていない業務があれば、その業務について適切な対価を設定しましょう。
荷待ち時間が相当長時間になっている運行も頻繁にお聞きします。この荷待ち時間が休憩時間なのか労働時間なのかは、残業代請求事件において常に争点となり、運行事業者側に不利な判断がなされることが少なくありません。
残業代請求との関係でも、労働時間の上限規制との関係でも、荷待ち時間を可能な限り削減するために、荷待ち時間を明確にした上で、そのの対価を支払ってもらう必要があります。
この点の合意がなされていない場合は、是非、運賃に付帯する料金として請求できるように交渉しましょう。
有料道路利用料金について
有料道路利用料金について全く負担してもらっていないという運送事業者様は最近はほとんどありませんが、片道だけなど、一部しか負担してもらえない場合は少なくありません。
ドライバーの賃金制度として歩合制を導入している運送会社では、荷主が負担しない有料道路利用料金については、歩合給の算定基礎から控除している場合も少なくありません。荷主が有料道路利用料金を負担しないことにより、運送会社の利益が減り、運転手の賃金も目減りしています。
さらに有料道路利用料金が支払われないことから一般道を走行することになれば、その分労働時間が長くなり、残業時間が長くなります。その分の人件費負担も利益を圧迫しています。
2024年4月1日以降は、労働時間の上限規制との関係でも、高速道路などの有料道路を使用する必要性は高まります。
したがって、有料道路利用料金については、一定の距離以上の運行に関して可能な限り荷主に負担してもらえるように交渉することが必要です。
価格交渉により取り決める内容
単純にこれまでの運賃を上げる合意をするだけでも十分ですが、その際にはできるだけ取引の内容を書面でまとめましょう。
書面に記載すべき事項は次の通りです。
1.荷主・元請運送事業者名、受託者名
2.委託日・受託日
3.運送日時・場所(運行先)
4.運送品の概要、車種・台数
5.運賃・燃料サーチャージ
6.付帯業務内容
7.有料道路利用料金、附帯業務料金、車両留置料金(荷待ち時間に対応する料金)
8.支払方法・期日
基本的な合意ですので、上記3・4項は概要になることが多いですが、距離制運賃の場合、エリア別に料金を設定することも少なくないです。こうしたエリア別運賃についても明確に書面にしましょう。
国土交通省も、「トラック運送業における書面化推進ガイドライン 」(PDF)を公開して、契約内容の書面化を推奨しています。
運賃等の価格交渉の法的根拠
国土交通省
運賃交渉は基本的には企業間における契約交渉ですから、法律等によって具体的な運賃が決まるわけではありません。
しかし、国土交通省は、下請運送事業者が不利な立場に置かれ、一方的に低価格な運賃を強いられて運行している実態を問題視しており、様々な制度を用意して価格交渉を推奨しています。
「トラック運送業に関する適正取引推進ガイドライン」を発表し、実際の取引において問題となり得る取引事例、望ましい取引のあり方を示しています。
また、トラック運送事業者が長時間労働などによって過労運転防止違反等の違反行為をしていた場合に、その運行について、荷主が指示するなど主体的な関与があった場合には、国土交通省が荷主に対して是正措置を勧告することになります。そして勧告を受けた荷主については、その名称が公表されます。
したがって、専属で取引している荷主・元請運送事業者がいる場合には、こうした荷主勧告制度の存在を説明することにより、取引条件の見直しを促すことができます。規模が大きく、法令遵守に誠実に取り組む企業であれば、こうした指摘が交渉に大きく影響する可能性があります。
公正取引委員会
国土交通省だけでなく公正取引委員会も、下請運送事業者が荷主・元請運送事業者から不利な取引を強いられていることを問題視しています。
労務費、原材料費エネルギー、コスト等の上昇分を取引価格に反映せず従来通りの取引価格を据え置くことは、独占禁止法上の優越的地位の濫用に該当する恐れがあります。
そのため、公正取引委員会は、以下の2つの行為が独占禁止法に違反することを明確にしています。
1.労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストの上昇分の取引価格への反映の必要性について、価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置くこと
2.労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストが上昇したため、取引の相手方が取引価格の引上げを求めたにもかかわらず、価格転嫁をしない理由を書面、電子メール等で取引の相手方に回答することなく、従来どおりに取引価格を据え置くこと
したがって、荷主・元請運送事業者が、燃料費の高騰や割増率の上昇による人件費の負担に基づく価格交渉を拒否することは、独占禁止法に違反する可能性が高いのです。
特に運送業において、値上げの協議がされていないことを公正取引委員会も問題視し、調査の上報告書を発表しています。
価格交渉には法的な根拠がある
国土交通省や公正取引委員会も、運送業において下請け運送事業者が不利な取引を強いられていることを問題視しており、価格交渉それ自体を拒否することは法令違反となる可能性が高いのです。利益が残らないような運賃での運行が続いているようなケースでは、価格交渉を自信を持って行いましょう。
ただし、法令違反を理由に荷主・元請運送事業者に対し値上げを要求することにより、取引先との関係が悪化し取引を打ち切られてしまうリスクがあります。
したがって、独占禁止法違反を正面から主張するのではなく、これまで説明しましたとおり、法令を遵守して運行を続ける必要性を具体的な根拠に基づいて丁寧に説明することが重要です。
まとめ
職人気質な経営者を中心に交渉ごとは苦手だと仰る方が多いです。私のクライアント・相談者にも多くいらっしゃいます。しかし、2023年4月からは中小企業も月60時間越えの残業については割増率がアップします。燃料費も上昇する可能性が高いでしょう。2024年から労働時間の上限規制が適用されます。こうした運送業を取り巻く環境からすれば、冒頭で述べたとおり、賃金を上げなければ、運転手の確保や法令を遵守した運行は今後ますます難しくなっていくでしょう。
値上げ交渉について苦手意識のある経営者の方も、このサイトを参考に勇気を出して取り組んでいただければと思います。交渉の必要性は理解できても、自社では値上げ交渉のための材料を準備するのが大変だ、行動に移せそうにないとお考えの場合には、弊所で説明資料の作成から運賃値上げ交渉までサポートさせていただきます。
もちろん、現在の運賃、取引先や競合との関係上、運賃値上げ交渉を行わない方が良い場合もあります。そのような場合にはその旨進言させていただきます。
顧問先のクライアントの運賃値上げ交渉を様々な形で支援させていただいています。
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