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Q & A 休車損はどのように計算すればいいのですか。

A. 休車損の基本的計算方法は次のとおりです。

【(被害車両の1日の売上-変動費)×修理期間または買替期間】

③ 具体的な休車損害を認定した事例 

事案の概要(神戸地判H15.1.22 交民集36巻1号85 頁)

  • 交通事故により車両が損傷し営業に支障がでたタクシー会社が、相手方に対して、事故により損傷した車両の運賃収入から休車により支出を免れた経費を控除したものをベースに算出された休業損害を請求した事案。
  • 被告は、事故により損傷した車両が修理のため休車したとしても、他の車両の運行によってその稼働を補うことが可能であるとして、休車損害の発生を争う旨主張しました。

争点

  • 休車損の金額

裁判所の判断 

裁判所は以下のように判示しました。

休車損の計算方法

控訴人車両は,本件事故によって損傷を被り,修理を要したため,平成12年11月7日の半日と同月8日から同月11日までの4日間休車とされ,控訴人は,控訴人車両を休車としたことによって,得べかりし利益(控訴人車両の運賃収入から諸経費を控除したもの)を喪失したものと認められる。

具体的な休車損の認定

2)ア 運賃収入
証拠(甲4の2ないし4)によれば,控訴人車両の運賃収入は,平成12年8月度が98万7710円,同年9月度が102万8180円,同年10月度が126万5390円であったと認められるから,控訴人車両の1日当たりの運賃収入は3万5666円と認められる。
(987,710+1,028,180+1,265,390)÷92≒35,666

事故前3か月分の売上に基づき1日あたりの売上を計算しています。

イ 諸経費
(ア) 燃料費
証拠(甲4の2ないし4,甲7)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人車両の使用燃料は,同年8月度が1473.81リットル,同年9月度が1588.29リットル,同年10月度が1826.40リットルであり,同年11月当時の燃料費は,1リットル当たり41円であったと認められるから,消費税をも考慮すると,控訴人車両の1日当たりの燃料費は2287円と認められる。
(1473.81+1588.29+1826.40)÷92×41×1.05≒2,287

売上の同じ事故前3か月間の1日あたりの燃料費を計算しています。


(イ) タイヤ消耗費
証拠(甲4の2ないし4,甲8,証人A)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人は,その保有する車両のタイヤを走行距離8万キロメートルごとに4本とも交換しているところ,同年11月当時のタイヤの価格は1本4400円であり,控訴人車両の全走行距離は,同年8月度が6548キロメートル,同年9月度が7094キロメートル,同年10月度が8763キロメートルであったと認められるから,消費税をも考慮すると,控訴人車両の1日当たりのタイヤ消耗費は56円と認められる。
(4,400×4÷80,000)×(6,548+7,094+8,763)÷92×1.05≒56

事故前3か月の走行距離に応じて、タイヤ消耗分の経費を算出しています。


(ウ) オイル代
証拠(甲9)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人は,その保有する車両のオイルを走行距離5000キロメートルごとに4リットル交換しているところ,同年11月当時のオイルの価格は,2000リットル当たり26万6667円であったと認められ,前記(イ)に認定した控訴人車両の全走行距離に照らし,また,消費税をも考慮すると,控訴人車両の1日当たりのオイル代は27円と認められる。
{(266,667÷2000)×4}÷5,000×(6,548+7,094+8,763)÷92×1.05≒27

タイヤ消耗分と同様に事故前3か月の走行距離に応じて、オイル代分の経費を算出しています。


(エ) 修繕費
証拠(甲10の1ないし12)によれば,平成11年10月21日から平成12年10月20日までの控訴人車両の修繕費(部品代及び技術料。なお,技術料も修繕に必要な経費である。)は,別紙修繕費計算書記載のとおり,合計11万0360円であったと認められるから,消費税をも考慮すると,控訴人車両の1日当たりの修繕費は316円と認められる。
110,360÷366×1.05≒316

事故前1年分の修繕費を日割り計算しています。


(オ) 乗務員人件費
証拠(甲11,22,24,証人A)及び弁論の全趣旨によれば,平成11年8月1日から平成12年7月31日までの控訴人の運賃収入に占める乗務員の賃金の割合は53.8パーセントであり,控訴人と乗務員との間の雇用契約上,営業収入から消費税及び遠距離割引分を控除した運賃収入額が賃金計算の基礎とされ,月間運賃収入が一定の額(「足切額」と称されている。)以上に達した者に対して支払われる基本給(これは,足切額以上の乗務に対して1時間当たり786円を支給するというものであり,乗務時間ひいては運賃収入額に比例する性質のものである。),基礎歩合給,歩合給及び深夜手当の合計額が運賃収入の50パーセントに相当する額となるように定められ,月間運賃収入が足切額未満の者に対して支払われる歩合給及び深夜手当の合計額が運賃収入の40パーセントに相当する額となるように定められていると認められることを総合すると,控訴人車両の乗務員人件費は,控訴人車両の運賃収入の50パーセントと認め,これを経費として控訴人車両の運賃収入から控除するのが相当であり,前記アに認定した控訴人車両の運賃収入に照らすと,控訴人車両の1日当たりの乗務員人件費は1万7833円と認められる。
35,666×0.5=17,833

ドライバ―の賃金が、出来高による歩合制により、運賃収入(売上)の50%から40%を占めることから、人件費を運賃収入の50%と認め、1日当たりの人件費を算出しています。


(カ) その他運送費
証拠(甲21)及び弁論の全趣旨によれば,平成12年度の中核都市(控訴人の本店所在地である尼崎市は,人口30万人以上100万人未満の市である中核都市に当たる。)におけるハイヤー・タクシー事業の実働日車当たりの平均営業収益は2万9417円,平均営業費は2万9785円,その他運送費(現業部門に係る経費で他の科目に属さないもの)は総費用の3.60パーセントであったと認められるから,前記アに認定した控訴人車両の運賃収入に照らすと,控訴人車両の1日当たりのその他運送費は1300円と認められる。
35,666×{(29,785×0.036)÷29,417}≒1300

その他運送費を控除しています。


ウ まとめ
以上によれば,控訴人車両の1日当たりの休車損害の額は,前記アの運賃収入3万5666円から前記イの諸経費合計2万1819円を控除した残額である1万3847円であると認められるから,控訴人車両の4.5日間の休車損害の額は6万2311円と認められる。
{35,666-(2,287+56+27+316+17,833+1300)}×4.5=62,311

上記のとおろい、裁判所は、売上(運賃収入)から諸経費(変動費)を控除して1日あたりの利益を算出し、同利益に休車期間を乗じて休車損を算出しています。

休車損害=1日あたりの運賃収入-【諸経費(燃料費-タイヤ消耗費-オイル代-修繕費-乗務員人件費(一部)-その他運送費)】×休車期間

休車損害のポイント

休車損の基礎となるのは、被害車両による1日あたりの売上から変動費を控除した利益です。

控除するのは経費のすべてではなくて、変動費なのですね。

1日あたりの利益に修理期間または買替期間を乗じて(掛けて)休車損を算出することになります。

どれくらいの期間の休車損が認められるのでしょうか。

合理的な必要性もなく修理や買替に長期間を要した場合は、全期間の損害が認められない可能性があります。

通常の修理であれば、部品の取寄せに要する期間を考慮しても精々3か月程度です。

買替の場合、特殊な車両の場合3か月以上かかるケースもあり得るでしょう。

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参考文献・サイト等

協会が調査したトラック業界の各種統計資料が掲載されています。統計上の運賃、諸経費、利益について参考になる情報があります。

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この記事を書いた人

松坂典洋
弁護士・社会保険労務士
運送業に特化する福岡の弁護士・社会保険労務士です。
20代前半、京都で人力車を引いていました。
就労実態が労基法や就業規則と整合しないことから、トラブルを抱えた運送業者様から多くの残業代請求事件等の依頼を受けています。
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