Q & A 耐用年数を過ぎた観光バスの時価額
耐用年数を過ぎた観光バスの時価額について判断した裁判例
事案の概要
- 観光バスの所有会社が、事故によりバス等が損傷したとして、修理費等を請求した事案。
- 被告は、原告車両の時価については,税務上の計算による残存価格によるべきと主張し、時価額の算定方法が争点となりました。
(大阪地判H20.12.17 交民41巻6号1655頁)
裁判所の判断
裁判所は、法定耐用年数を過ぎた車両の時価額の算定方法については、現実の経済的価値に即して算定されるべきと述べた上で、本件の観光バスについて経済的価値を算出して、時価額を認定しました。具体的な判示は次のとおりです。
法定耐用年数を過ぎた車両の時価額の算定方法
原告車両は,減価償却資産の耐用年数等に関する省令所定の「乗合自動車」に該当することが明らかであるから,その法定耐用年数は5年と解すべきである。しかしながら,事故によって損傷した車両の価格については,上記価格ではなく,現実の経済的価値に即して算定されるべきである。
本件観光バスの現実の経済的価値
証拠(甲6,7)及び弁論の全趣旨によれば,原告車両のような観光バスは,上記法定耐用年数をすぎても改修,改造等を行うことによって,一般的には15年ないし20年は使用することが可能であること,原告車両は,新車価格が3734万9000円であるところ,初度登録から本件事故のときまで15年を経過しているため,現実の耐用期間を20年とした場合の定率法による残価率は,0.178であることが認められる。
そうすると,原告車両の残存価格は,上記新車価格にその残価率を乗じた664万8122円となる
時価と修理費用の比較
これは,前記(2)の修理費用相当額である370万円を上回ることが認められる。これによれば,本件事故によって原告車両に生じた損傷は分損であるから,原告は,修理費用相当額の全額について賠償を受けることができる。
耐用年数を過ぎた車両の時価額算定のポイント
法定耐用年数を過ぎた車両についても、その時価額については、現実の経済的価値に即して算定することになります。
法定耐用年数を過ぎたとしても、そのことだけで無価値ということにはならないということですね。
そのとおりです。現実に車両が機能を果たし、価値があるという実態に着目して判断することになります。
業務用車両の中には、法定耐用年数を大幅に超過しても、現実には大活躍する車両が多いでしょう。
例えば、バス、トレーラー、フォークリフト、ユンボなどです。
こうした車両の中には市場価格がない場合もあろうかと思います。
その場合、経済的価値を丁寧に立証する必要があります。
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参考になる文献・サイト
上記ページに主な減価償却資産の耐用年数表(PDF/406KB)へのリンクが貼られています。
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