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交通事故で業務用のトレーラー、トラック等の車両が損傷した場合に、どのような項目の損害をどの程度請求できるでしょうか。 簡単に解説します 。

車両が全損したのかどうかで、損害の種類及び金額が大きく異なります。

目次

車両が全損した場合に請求できる損害とは

まず、全損により新しい車両を購入しなければならない場合に請求できる損害について説明します。 

時価額とは

交通事故により車両が全損した場合、車両の損害は時価額をもとに算定されます。

時価額とは、同一の車種・年式・型、同程度の使用状態、走行距離等の自動車を中古車市場において購入する際の価額のことです。

中古車市場価格の算定においては、実務上、主に『自動車価格月報』(通称「レッドブック」)、『中古車価格ガイドブック』(通称「イエローブック」)が参考にされています。ただし、こうした価格は、使用状態が良好なものを前提としていますので、当該車両の走行距離等の状態を考慮する必要があります。

業務用の特殊車両は、「建設車両・特殊車両標準価格表」(全国技術アジャスター協会)などが参考になりますが、特殊なオプションや改造がなされていることも少なく、時価額が争いになることが多いです。

その場合には同種車両の取引事例や特殊車両を取り扱っている業者の評価書などで時価額を立証することになります。

特別仕様が施された車両の時価額

上記ページでは、特殊仕様が施された車両の時価額の算定方法について判断した裁判例を紹介しています。

耐用年数を過ぎた観光バスの時価額

上記ページでは、法定耐用年数を過ぎた車両の時価額の算定方法について判断した裁判例を紹介しています。

買替諸費用

全損の場合、時価額以外に車両を買い替えるために必要となった諸費用の一部についても損害として請求できます。

車両を買い替えることにならなければ、支払う必要はなかったわけですから、事故と因果関係があるといえるのです。

買替諸費用とは、事故車両と同一の車種・年式・型、同程度の使用状態、走行距離等の自動車を中古車市場において購入する際に要する諸費用等のことです。

損害として認められる買替諸費用は以下のとおりです。

  • 車両の登録、車庫証明の取得及び廃車の手続にかかる法定の手数料相当額
  • ディーラーに、車両の登録、車庫証明の取得及び廃車の手続を依頼した場合の報酬額として相当な金額
  • 自動車取得税

業務用車両の場合、買い換えのために要する諸費用が高額になることが多いです。こうした諸費用の請求をしていないで示談してしまうケースがあります。注意しましょう

なお、新しく取得した車両の自動車税、自動車重量税、自賠責保険料については、事故による損害とは評価されないため、買替諸費用としては請求ができません。買い替えのための諸費用の全てが損害として請求できるわけではありません。

リース車両の場合の違約金等

リース車両が事故に遭った場合、修理が終了するまでリース料の支払いを継続しなければなりませんし、全損となれば、解約のためにリース会社に違約金(残りのリース期間のリース料相当額)を支払わなければならないでしょう。しかし、リース車両の所有者はリース会社であり、ユーザーである運送会社ではないため、非常に難しい問題です。

全損の場合

リース車両の所有者は、リース会社です。したがって、リース車両が全損した場合も、損害賠償請求権を有するのは、原則として、所有者であるリース会社となります。

しかし、リース期間満了後に最終的にユーザーが車両を取得することが予定されているリース契約の場合、所有権留保付売買の場合と同様に、買主(ユーザー)が損害賠償請求できると考える余地があります。

しかも、ユーザーがリース料ないし違約金を全額支払って車両の所有権を取得した場合には、リース会社に損害はありませんから、ユーザーが損害賠償請求権を取得すると考えることができます(平成7年赤い本下巻(講演録)「リース・割賦販売と損害の範囲」、平成27年赤い本下巻(講演録)「オープン・エンド方式のオペレーティング・リース契約を中途解約した場合,ユーザーが負担する中途解約違約金について」参照)。

リース契約の違約金についてユーザーの損賠償請求を認めた事例として、東京地裁平成19年9月19日判決があります。

リース契約の違約金について、「通常損害として,本件事故と相当因果関係がある損害というべきである。」として相当因果関係を肯定した裁判例も存在します(東京地判H19.9.19)。

上記裁判例が述べるとおり、業務用車両については特にリース契約が締結されていることは珍しくありません。

他方で、リース契約の違約金は特別損害にあたるところ、違約金の約定があることを予見または予見し得たという事情を認めるに足らないとして否定した事例として、名古屋地裁平成15年4月16日判決があります。

車両に不具合が残るなどして中途解約した場合

車両に不具合が残り、リース契約を解約する場合、リース契約に基づき、リース会社に違約金を支払わなければならないことがあります。その場合、ユーザーとしては、負担した違約金についても相手方に損害として請求したいところです。

ユーザーが自らの意思でリース契約を終了させて違約金が発生している上、そもそも違約金はリース契約に基づいて生じる債権で、その内容は、未払リース料や手数料等であり、交通事故とは直接関係のない項目も含まれることから、損害として認められるかが、問題になるわけです。

この点に関して、リース契約に基づく違約金は、通常損害としては認められず、特別損害であり、通常予見することができないとの理由により、相当因果関係を否定した裁判例があります(神戸地裁平成4年8月21日)。

通常損害または特別損害として損害賠償が認められるケースもあり得ますので、一概にリース契約を中途解約したケース(全損ではないケース)の損害賠償を否定することもできないと考えます。

いずれせよ、リース契約の内容は多様ですし、事故による車両の損傷状況や損害額も様々です。リース車両の損害賠償について裁判実務の取扱いも確立していません。リース車両の事故の場合には、必ず弁護士に相談することをお勧めします。

どのような場合に全損といえるか

車両が全損した場合には上記の通り時価額や買替諸費用を損害として請求できるわけですが、全損と評価できるかどうかで争われるケースが少なくありません。

どのような場合に全損と言えるのでしょうか。簡単に解説します。

物理的全損

物理的全損とは、車両が修復不能なほどの重大な損傷を受けた場合のことをいいます。

経済的全損

経済的全損とは、修理費用が事故前の車両価格を超える場合のことをいいます。

修理により修復が見込まれるような場合でも、その修理費用が事故前の車両価格を超える時には、修理費用の全額を損害賠償として請求できるわけではありません。損害賠償請求は、その事故前の車両価格が上限となります。

事故車両の時価額はどのように決まるのか

一般的な算定方法

車両の時価額の算定は、レッドブックを参考にされることが多いのは上述のとおりですが、そのレッドブックに掲載される中古車市場価格は、一定の標準的な条件下での車両を前提とした価格になっています。

そのため、車両について特段の個別の事情がある場合、例えば、使用状態の良し悪しや走行距離の多い少ない等については、加算又は減算することで時価額を算定することが一般的な運用です。

具体的なケースについて説明しましょう。

新車の時価額

初年度登録からそれほど期間が経過していない新車は、レッドブックに掲載されていません。また、中古車としての流通実績も少ないです。そのため、中古車市場価格の算定が困難で争点になりやすいケースです。

中古車市場価格が形成されていないことからその時価額の立証が困難な場合、裁判例においては、一定の減価償却を行うことをベースに、個別の特段の事情を立証していくことでプラスαの算定を行うことが多いです。

初年度登録から長期間が経過した古い車両の時価額

古い車両の場合も、レッドブックの掲載期間が10年間程度であることや、中古車市場での流通実績も少なくなることから、車両時価額の算定が困難になるケースが多々あります。

また、市場価格がほとんどつかない、ということもあり得ます。

しかしながら、現実に走行していた車両である以上、交換価値・使用価値がゼロということにはならないという観点から、中古車市場における類似する車両の取引例等を参考にしたり、これが存在しない場合には、使用利益が考慮された金額で算定されています。

特殊な車両

業務用の特殊車両も、レッドブックに掲載がないことや中古車市場での流通例も少ないことが多いことから、車両時価額の算定が困難です。そのため、ケースバイケースで検討されるというのが実情です。

以下、具体例をご紹介します。

観光バスの例:耐用年数を法定耐用年数(5年)ではなく、観光バスとして現実に使用可能な20年と評価し、新車価格に対して定率法による減価償却を行う方法で時価額を算定。

郵便物集配業務用車両の例(特殊装備車両):同種同等の標準車の中古車の取得価格 + 特別仕様部分について同種同等の仕様を施した場合に要する価格=車両時価額  ➡ 特別仕様部分について車両本体部分と同じ割合で減価 ➡ 時価額を算定 ➡ 合計金額が当該車両全体の時価額

全損以外の場合に車両について請求できる損害とは

全損以外の場合には、修理費用が損害として請求できることは争いがありませんが、事故にあったことで評価額が下がったことについての損害や修理中の代車料、休車損、車両の保管費用、リース費用などが問題になります。

修理費用以外の損害については、損害が発生していることに気が付かない方もいますし、その意味を誤解して過大または過小な金額で 示談しているケースがあります。適正な額の損害を賠償してもらいましょう。

それぞれの意味について簡単に説明していきます。

修理費用

原状回復に必要な相当範囲の費用です。

事故と無関係の損傷部分を修理して請求するケースもありますが、もちろん、当該事故による損傷ではない部分の修理費用は認められません。

損害として認められるのは、原状回復に必要な相当な範囲ですので、事故前よりグレードを上げるための過剰な修理も認められません。

評価損

損害車両に対して十分な修理がなされた場合であっても、修理後の車両価格が、事故前の価格を下回ることを評価損といいます。

特に新車や高級な車両で主張されることが多いです。

代車料

車両が損傷して、その修理や買替えのために車両を使用出来なかった場合に、有償で他の車両を賃借するのに要した費用のこと。

休車損

営業車(運送会社の貨物自動車、タクシー等)が事故により損傷して営業ができなかった場合の損害です。

売上ではありません。利益が休車損となります。

保管費用

事故車両の保管に要した費用です。

修理費用を算定する方法

修理費用の一般的な算定方法

修理費用は、修理工場や保険会社の損害額算定を担当するアジャスターと呼ばれるスタッフが作成した見積書を参考に、修理費用の必要性・相当性について検討されます。

修理費用の必要性・相当性については、修理は基本的に「原状回復のために相当な範囲のものに限られる」ことから、損傷の部位・程度・損傷がその交通事故に起因するかどうか、修理の程度、方法の相当性、レバーレイトと呼ばれる作業工賃が問題となりやすい傾向にあります。

これらの認定は、損傷が事故態様と整合しているか、損傷の新鮮さ等から判断されるほか、レバーレイトについては、一般的に、合理的な理由がないのに標準的に用いられている基準料よりも高額なものである場合には、これを減額した上で標準的な技術料の範囲での認定を行うこととされています。

業務用車両の場合、修理費用が高額になる事例が多く、修理費用が争われる事例も少なくありません。

全部塗装か一部塗装か

車両の一部が損壊した場合、損傷部分付近のみの部分塗装では痕が残り完全な修復ができないことから、少なくとも当該パーツ全体の塗装(全塗装)を請求するケースは少なくありません。

しかし、最近の裁判例においては、塗装技術が格段に進歩していることを理由に、全塗装は特段の事情がなければ認められない、という判断が主流です。この判断は、高級車においても然りです。

全塗装が相当と認められたケースは、車体に付着すると腐食してしまうバッテリー液が車両の広範な部分に付着した場合や、特殊塗装の車両のため、技術的に部分塗装では色合わせが困難であった場合など、特殊な事情があった場合に留まっています。

新車や高級車で問題になることが多く、業務用車両ではこの点が争われることは多くはありません。しかし、会社独自の塗装をしている場合に、全塗装がどうしても必要な事情があれば、全塗装を主張しうるケースもあり得ると考えます。

改造車両は改造部分の修理費用も損害賠償されるのか

改造車両の改造部分の修理費用も損害となるかは争いになることが多いです。

業務用車両の改造と趣味の改造は分けて考える必要があります。

裁判実務での算定方法

損傷車両が改造車であった場合、改造部分についても損害対象になるか(事故との相当因果関係が認められるか、認められる場合の範囲)が争点となります。

裁判例

改造部分についての修理費用については、原則として、相当因果関係を認めるべき、つまり、損害賠償として認めるべきだと考えられています。

他方、その改造が道路運送車両法の定める保安基準に反するなど法に抵触するような場合や、その改造が、改造内容(改造箇所、改造方法、改造程度等)に照らし、ことさらに損害を拡大するような場合には、過失相殺の法理により、例外的にその損害の負担を一定程度減額ないし免責するのが相当とされています。

したがって、業務用車両の事故の場合、業務に必要な改造であれば、原則として、当該部分の修理費用も損害として認められることになりますが、業務上の必要性がないような改造の場合、全額が賠償されないということになります。

具体的な裁判例を見てみましょう。

デコレーショントラック(デコトラ)判決(東京高裁判決・H11.12.27)

裁判例 デコレーショントラック(デコトラ)判決(東京高裁判決・H11.12.27)

交差点における出会頭衝突事故によって損傷を受けた車体にデコレーションが施された大型貨物自動車の修理費用に関して、裁判所は、

  • 当該改造は車両所有者の特異な好みによって特別な「飾り」を取り付けていることであり、車両の走行等の機能にプラスの影響を及ぼすものではないこと
  • 当該改造≒飾りを装着させたことによってむしろ損害拡大の要因となっていること

を根拠として、改造部分の修理費算定については、当該改造車両所有者側も損害拡大に関与していることを前提に損害賠償額を定めることが公平であるとして、当該改造部分の修理費用の5割を減額しています。

これに、減額しなかった修理費用を足し、消費税を加算した金額を限度として、修理費用を認定しました。

運送業の業務に必要な改造については、必要性がないと認定される可能性は低いといえますので、上記裁判例のような趣味の改造でなえれば、改造費用についても相当額が認められるでしょう。

詳細は、デコトラのデコレーション部分の修理費用を参照してください。

事故による修理歴による価値の低下(評価損)は損害賠償されるのか

評価損とは

損害車両に対して十分な修理がなされた場合であっても、機能や外観に欠陥が残存したり、事故歴があることにより隠れた欠陥があるかもしれない、縁起が悪いなどの理由で中古車市場において、修理後の車両価格が事故前の価格を下回ることを評価損といいます。

裁判実務の傾向

裁判実務においては、初年度登録からの期間、走行距離、修理の程度、車種等を考慮して評価損の有無及び額を認定します。修理しても原状回復ができない欠陥が残った場合や購入して間もない場合、認定されることが多い傾向にあります。

なお、算定方法としては、以下のものがあります。具体的な事例によって用いる算定方法が異なります。

  • 減価方式:事故当時の車両価格と修理後の車両価格との差額を損害とする方法
  • 時価基準方式:事故当時の車両価格の一定割合を損害とする方法
  • 金額表示方式:事故車両の種類、使用期間、被害の内容・程度、修理費用等諸般の事情を考慮して損害を金額で示す方法
  • 修理費基準方式:修理費の一定割合を損害とする方法
  • 査定方式:財団法人日本自動車検査協会や中古買取業者の査定額や算定式を参考にする方法

事故により代車が必要になった場合、代車料は損害賠償されるか。

代車を使用する必要性はあるか

代車料が損害として認められるためには、実際に代車を使用したことが必要なことはもちろんですが、代車を使用する必要性が求められます。

代車を借りなくても、他の公共交通機関を利用することにより格別の不具合が生じない場合や、使用可能な車両を保有している場合には、代車の必要性はないと判断されます。

代車のグレードは事故車両と同等か

代車は、事故車両を修理等のために使用することができないという比較的短期間の事態に対応するために使用されるものです。

したがって、基本的には、事故車両と必ずしも同一の車種である必要はないと考えられていますが、一般的には、1日あたり5000円から1万5000円程度が多いでしょう。

事故車両が高級車の場合、それと同等のグレードの高級車を代車として使用した場合の高額な代車料が損害として認められるか否か、しばしば争いとなります。

これについては、代車の使用目的等を考慮し、特段当該車両を代車として使用する必要性が認められない場合には、国産高級車の限度(1日あたり1万5000円ないし2万5000円程度)で相当な代車料を認定する事案が大勢と考えられています。

事故車両が外国産の超高級車であるとして、1日あたり3万~10万円といった損害が請求されることがありますが、そうした車両を使用する合理的必要性が存在しない限り、日本の裁判実務では国産高級車程度を限度として認められる事案が多いです。

しかし、業務用車両である場合は、高級車に関する裁判実務の取扱いがそのまま当てはまるわけではありません。

普通車両と異なる価格が認められる可能性は十分にあります。

その代車を使用する合理的必要性を主張立証できれば、国産高級車の限度(1日あたり1万5000円ないし2万5000円程度)を超える金額が損害として認められると考えられます。

代車を使用できる期間が不当に長くないか

代車料は、代車を使用した期間のうち相当期間に限り認められます。

代車の使用期間については、修理に着手するまでに期間を要したことが原因で代車の使用期間が長くなったことの相当性が争点になることが多々あります。

このような場合は、被害者側にも、信義則上、損害の拡大を防ぐため、速やかに修理や買替えに着手すべき義務があると考えられることから、特段の必要性が認められないにもかかわらず、被害者側が修理に着手するまでに長期間が経過した場合には、社会通念上相当と認められる期間に限り、代車使用の相当性が認められます。

例えば、3か月にわたり代車を使用したような場合に、本当に3か月も修理または買替えに必要であったのかが問題になります。

運送業等の業務用車両の場合、普通車とは異なり、修理や買替に数か月から1年程度を要する場合もあります。当該車両の特殊性に関する事情を丁寧に立証する必要があるでしょう。

業務車両が事故により使用できなくなり売上・利益が減少し、休車損が発生した場合

休車損を請求できるか

休車損の請求は、営業車両(トラックなどの貨物自動車、タクシー等)の損傷により営業ができなかった場合に請求が可能です。

しかし、休車損が発生したことや、その具体的な金額を証明することは簡単ではなく、裁判で争われることが多いです。

休車損の計算方法はどうすればいいか

休車損は、被害車両が稼働したことによって得られたはずの利益です。売上ではありません。

計算方法は次のとおり考えることが一般的です。

休車損害=〔被害車両の1日あたりの売上高ー変動経費(燃料費等)〕×必要な休車期間

1日あたりの売上高は、事故前3ヵ月もしくは1年の売上実績を基に算出するのが一般的です。

変動経費は、燃料費、通行料、修理代等を指します。

減価償却費、保険料、駐車場使用料は固定経費ですので、控除は不要とされています。

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休車損の計算方法

遊休車両がある場合に注意

予備車両のことを遊休車両ともいいますが、遊休車両がある場合、その車両を使用すれば、被害車両を使用できないことによって売上を上げられないということがありませんので(現実的に休車損は発生しませんので)、休車損は認められません。

この点が争点となる事例も非常に多いです。

また、同様の考え方で、代車を使用した場合は休車損を請求することはできません。

休車損を請求できる期間

被害車両を修理するまでの期間、または、代替車両を購入するまでの期間が休車損を請求できる期間ということになります。しかし、無制限に長期間が認められるわけではありません。

相当な修理期間もしくは買替期間の範囲内とされ、一般的には、3か月間程度が認められる事例が多いです。

しかし、運送業の業務用車両場合、普通車両と異なる事情があります。改造が必要であったりして、発注から納車まで半年から1年程度の期間を要する場合もあります。

したがって、業務用車両の休車損については、特に期間に関して、当該車両の特殊性を丁寧に主張立証する必要があります。

具体的な休車損を証明できない場合

休車損の具体的な金額の立証は簡単ではありません。その場合、民訴法248条により損害額の認定を得ることができます。

 すなわち、被害車両が稼働できない事態となり、損害が発生したことは立証できるが、具体的な金額を証明できないというケースがありますが、その場合、裁判所が相当な損害額を認定することができるのです(民訴法248条)。

裁判例:名古屋簡裁平成18年4月11日判決

裁判例:名古屋簡裁平成18年4月11日判決

 原告の所有車両の中で、損傷車両と同車種で目的用途等も同じくする車両の過去4ヵ月分の総売上金額の5割が人件費総額と仮定した上で、売上粗利益から人件費総額を控除し、1日あたりの平均収益を休車損と認定した裁判例があります。

休車損と代車料の関係

代車を使用したとして代車料を請求すのであれば、その期間中の休車損は請求できません。代車料と休車損は両立しないのです。

その他

物損事故の慰謝料

原則として、物損については慰謝料請求できません。

しかし、物損であっても、被害者のその物に対する特別の愛情が侵害されたようなときや、その物損が被害者の精神的平穏を著しく害するような場合には、慰謝料が認められることがあります。

とはいえ、被害者個人の極めて特殊な感情までもが考慮されるわけではありません。一般的な常識に照らして判断されます。

例えば、犬などの愛玩動物(ペット)は、もはや家族の一員で、飼い主にとってかけがえのない存在です。そのようなペットが交通事故によって死亡したり、死亡に匹敵するような重い障害を負い、飼い主が精神的苦痛を受けた場合、それは社会通念上、合理的な一般人の被る精神的損害と評価され、慰謝料の請求が可能となります。

運送業の経営者から、物損事故の対応のために多大な迷惑を被ったから、迷惑料として慰謝料を請求したいと相談を受けることがありますが、日本の裁判実務では、物損事故で慰謝料を請求するのは難しいのが現状です。

物損事故と労災の関係

物損事故については、もちろん労災保険給付は支給されません。

運転手が怪我をした場合には、労災保険を使用できます。後遺障害等級認定については、一般に労災保険の方が被害者に有利である言われていますが、事案によって、労災保険、自賠責、相手方への損害賠償(相手方加入の任意保険会社の支払い)のいずれかが有利であるかが異なります。

運転手の人身損害について労災保険を使用するかどうかは、弁護士に相談した上で方針を決めた方がよいでしょう。

積荷の損害も賠償請求できる

事故により積荷が損傷すれば、積荷についても損害賠償することができます。

しかし、積荷の所有権が運送業者でない場合(多くの場合そうでしょう)、運送業者が荷主に損害を賠償するなどして、運送業者が積荷について損害を被ったことが明確になった後に、積荷について損害賠償請求できます。

積荷ついては保険に加入していることが通常であり、保険契約に弁護士費用特約が付されていることが多いと思いますので、保険内容を確認の上、弁護士に相談することをお薦めします。

弁護士費用も請求できる

事故の損害賠償請求について、弁護士に依頼した場合、裁判実務上、損害額の1割程度が事故と相当因果関係に立つ損害として認められます。

しかし、裁判所は、実際に弁護士に支払う報酬額が損害額の1割を超えていても、1割程度しか認めません。

例えば、損害額が1000万円の場合、弁護士費用は100万です。実際に弁護士が依頼者から受け取る報酬額は考慮されません。

自動車の修理費用を裁判所が合理的な理由もなく一律に認定するすることはないにも関わらず、弁護士費用となると裁判所が一律に認定するのは、理解し難いです。

弁護士報酬が損害となることを認めた最高裁判例(最判昭和44年2月27日民集23巻2号441頁)の判旨からして、合理性がないと思うのですが…。

自動車保険等に附帯する弁護士特約を使用すべき

交通事故の被害を受けた場合でも、すぐには弁護士に相談しない運送業の経営者が多いです。

(加害者の場合には、保険会社に連絡して保険対応してもらうことが多いでしょう。)

しかし、最近は自動車保険をはじめとした様々な保険に弁護士特約が附帯していることが多いです。

初動で弁護士に相談しておけば、有利な解決ができたり、より多くの損害賠償を得られたという事案を数多く見てきました。

事故が起きた際に親身に対応してくれる保険代理店と契約しているのであれば、保険代理店に連絡して対応を決めることもあろうかと思います。

しかし、一般的には、まずは弁護士に相談するべきです。弁護士特約が付いていれば、依頼した場合の着手金・報酬金だけでなく、相談料も保険で賄われます。

弊所では、運送業の顧問先を多く抱え、こうした顧問先の物損事故案件も取り扱っていますので、お気軽にご相談下さい。

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