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業務上必要な指導とパワハラとの境界線

弁護士が解説する運送業における業務上必要な指導とパワハラとの境界線

目次

運送業におけるパワハラのリスク

「運送業におけるパワハラのリスク」の解説動画はこちら↑

ドライバ―不足の現状

ドライバ―不足の現状に関する統計資料(有効求人倍率)

運送業の経営者の皆様は、ドライバ―不足を実感されているとは思いますが、統計上も、有効求人倍率は全職業の2倍です。

人手不足は深刻です。

運送業は典型的な労働集約型産業(儲からない?運送業)

運送業は典型的な労働集約型産業

運送業は言うまでもなく労働集約型産業です。営業利益率は低く、最近のトラック運送事業者全体の平均はマイナスとなっています。

低い営業利益の原因は様々ありますが、人件費が大きな負担となっていることは間違いありません。

運送業のビジネスモデルから見る人件費の重要性

運送業のビジネスモデルの説明

運転手一人あたりの売上を月100万円とした場合の各費用の割合を簡単に整理した図です。

運転手の人件費は、30万~40万円が平均的でしょう。

想定外の残業代請求を受けることで、運転手の人件費がかさみ、赤字に転落してしまいます。

件数や単価を上げることで売上が増額し利益も上がることが最善ですが、荷主との関係上難しい問題があります。

そうすると、人件費(採用コスト含む)の抑制または生産性を向上するほかないということになります。

問題社員の存在やパワハラの存在は、採用や生産性向上の妨げになります。

運送業でよくある問題社員のパターン

① 甲会社のドライバー丙は、月に1回程度、欠勤・遅刻をしていたが、乙社長はその度に、1時間程度説教した。欠勤・遅刻について正確な記録は残しておらず、懲戒処分も行っていなかった。

② ドライバー丙は、目的地の到着予定時間に遅れたり、積荷を破損したりして、荷主から苦情を受けることがあった。乙社長は、「役立たず」「辞めてもらわなければならない」等説教した。積荷の破損について正確な記録は残しておらず、懲戒処分も行っていなかった。

③ ドライバー丙は、アルコール検査を怠ることがあった。乙社長は、その度に頭を軽く叩いて注意していた。アルコール検査の懈怠については正確な記録は残しておらず、懲戒処分も行っていなかった。

④ ドライバー丙は、甲会社に在職しながら、残業代請求及びパワハラについて損害賠償請求した。

⑤ 甲会社の乙社長は、弁護士に相談し、②~④の非違行為を理由にドライバー丙を直ちに解雇したい、自分の行為は必要な指導の範囲内だからパワハラにはあたらないと述べた。

問題社員に対し、上記①から⑤のような対応をしていませんか。問題社員に対し適時に適切な対応を取らないことは、それ自体問題であるだけでなく、後の別の問題に大きく影響します。

ハラスメント対策の必要性

ハラスメント対策の必要性

パワハラ防止法改正
(2022年4月1日中小企業も義務化)

社会意識の変化・世代間ギャップ

SNSによる情報の流通・拡散

パワハラ防止法が改正されて、2022年4月1日以降中小企業においても、パワハラ防止措置を講ずることが義務化されました。

また、社会意識が変化し、これまで許容されていた指導がパワハラと評価される時代です。

さらに、誰もがスマホを所有し、簡単に録音・録画され、パワハラの証拠が残ります。そして、瞬時にSNSを通じて拡散する時代です。

上記の事情から中小企業においても、事前のパワハラ防止策、事後の適切な対応を取ることが不可避です。

ハラスメントが被害者・行為者・会社に及ぼす重大な影響

ハラスメントが被害者・行為者・会社に及ぼす重大な影響

ハラスメント影響は経営者の皆様が想像されている以上に大きいです。

被害者自身が、心身に不調により、パフォーマンスが低下するだけでなく、欠勤して療養せざるを得ない事態となるケースも少なくありません。それ自体会社にとっても大きな損失です。それだけでなく、ケースによっては、長時間労働などの他の要因も影響するなどして、自死に至ることも少なくありません。特に長時間労働が常態化している運送業は注意すべきです。

ハラスメントの行為者も、懲戒処分を受けることにより、降格・退職・解雇に至り、経済的損失を被るだけでなく、社内での居場所を失うことなります。もちろん、被害者に対し損害を賠償すべき義務もあります。

会社も大きな損失を被ります。ハラスメントそれ自体により、被害者だけでなく、職場環境全体が悪化し、生産性が低下します。離職者が発生することもあります。新たな採用にもコストがかかります。ブラック企業であることの噂が広がれば、採用もままなりません。また、被害者は会社に対し、使用者責任や雇用契約上の債務不履行を理由に損害賠償請求することになるでしょう。

このようにハラスメントによる損害は各方面で非常に大きく、金銭的に容易には換算できない価値を失ってしまうのです。

パワハラ 5つのパターン

「パワハラ 5つのパターン」の解説動画はこちら↑

パワハラ5類型

パワハラは、上記5つの類型に分けることができると考えられます。

印象としては、職人型とスター型の事例が多いですが、複数の型が重複しているケースもあります。

ほとんどのケースでパワハラの加害者は、パワハラに該当することを自覚していない、許容される指導の範囲内だと考えています。被害者がパワハラ被害を訴えた後も、自らの非を理解できないケースも少なくありません。それだけにパワハラ常習者のパワハラを防止するのは難しいのです。

会社の中核となる従業員がパワハラに及んでいるが、なかなか注意できない、懲戒処分にできないであいる間に、新人が何人も退職したという話は、もはや中小企業「あるある」となっています。

パワハラの意義と判断基準

パワハラの定義

パワハラとは

パワーハラスメントとは

① 優越的な関係を背景とした言動であって

② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより

③ 労働者の就業環境が害されるもの

上記①から③までの要素を全て満たす必要あります。

また、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。

「 業務上必要かつ相当な範囲を超えた 」とは

業務上必要かつ相当な範囲を超えた とは

「 業務上必要かつ相当な範囲を超えた 」 言動とは 、 社会通念に照らし 、 当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない 、 又はその態様が相当でないものを指します。

具体的には、① 業務上明らかに必要性のない言動、② 業務の目的を大きく逸脱した言動、 ③ 業務を遂行するための手段として不適当な言動です。

実際に判断する際には、当該行為の回数 、 行為者の数等 、 その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動であるかどうかを判断することになります。

端的に言えば、①状況、②目的、③手段の3つがポイントとなるということです。

問題社員に対する指導の必要性 

問題社員に対する指導の必要性 

経営者としては、素行不良や能力不足が認められれる問題社員に対し厳しく指導したいところですが、パワハラは避けなければなりません。そこで、指導・監督とパワハラの 境界線を知る必要があるがあるわけです。

以下パワハラの態様に分けて、具体的にパワハラに該当する行為とパワハラを避けるポイント説明いたします。

指導とパワハラの境界線 「パワハラを避けるポイント」

指導とパワハラの境界線 「パワハラを避けるポイント」の解説動画はこちら↑

① 身体的な攻撃(暴行・傷害)をしない

指導とパワハラの境界線「パワハラを避けるポイント」
① 身体的な攻撃(暴行・傷害)をしない

市長がボールペンを叩きつけて叱責する行為がパワハラと認定された報道もありました。直接ではない間接的な攻撃も避けるべきです。

② 精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱)をしない

指導とパワハラの境界線「パワハラを避けるポイント」
② 精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱)をしない

③ 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)をしない

指導とパワハラの境界線「パワハラを避けるポイント」
③ 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)をしない

④ 過大な要求をしない

指導とパワハラの境界線「パワハラを避けるポイント」
④過大な要求をしない

⑤ 過小な要求をしない

指導とパワハラの境界線「パワハラを避けるポイント」
⑤過小な要求をしない

⑥ 私的なことに過度に立ち入らない

指導とパワハラの境界線「パワハラを避けるポイント」
⑥私的なことに過度に立ち入らない

指導とパワハラの境界線 「NGワード」

指導とパワハラの境界線 「NGワード」の解説動画はこちら↑

人格を否定するパワハラのNGワード

人格を否定するパワハラのNGワード

上記のような人格を否定する表現はNGです。避けましょう。

退職、解雇等を示唆するNGワード

退職、解雇等を示唆するNGワード

退職、解雇等を示唆する言動もNGです。根拠なく退職や解雇だと断定しないよう注意しましょう。

退職勧奨や懲戒解雇は、弁護士や社会保険労務士に相談した上で、適切に行いましょう。

指導とパワハラの境界線 「叱責(説教・注意)の方法」

指導とパワハラの境界線 「叱責(説教・注意)の方法」

指導を超えて、パワハラにあたると非難されないようする方法は、上記5点を守ることです。

この記事を書いた人

松坂典洋
弁護士・社会保険労務士
運送業に特化する福岡の弁護士・社会保険労務士です。
20代前半、京都で人力車を引いていました。
就労実態が労基法や就業規則と整合しないことから、トラブルを抱えた運送業者様から多くの残業代請求事件等の依頼を受けています。
人力車のお客様に対するサービス同様にクライアントにも満足して頂けるように誠実に対応するのがモットーです。
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