完全歩合制はよくない、基本給を設定しなければならないと思い込んだ経営者の方が、完全歩合制でありながら、中途半端な就業規則を定めて(放置して)、歩合の一部を基本給(例:15万円)として振り分けて支払ってしまった結果、未払残業代等の請求を受ける事例が増えています。
経営者の方は、完全歩合制でありながら、基本給の項目を設けている理由について、「完全歩合制はよくない、やめてくれと、労基から言われたから。」「他の経営者から、そう聞いたから。」とおっしゃいます。
しかし、完全歩合制は違法ではありません。完全歩合制を違法とする法律はありません。
では、労働基準監督署が間違っているのでしょうか。
そうではありません。
労働基準監督署の監督官は、歩合制の場合も、労働基準法27条の最低保障給を支払って欲しいという意味で、完全歩合はよくない、止めてくれと言っているのです。
では、最低保障給として、いくら支払わなければいけないのでしょうか。
以下の①と②を満たす給料です。
①通常の賃金の60%
②最低賃金以上
最低保障給と基本給は意味が異なります。
この区別をせずに基本給を設定されている運送業者が多いです。
運送業の就業規則のひな型には、「基本給」と「歩合給」の項目が定められていることがあり、完全歩合でありながら、そうしたひな型をそのまま利用したため、リスクを抱えた就業規則となってしまっていることが多いです。
完全歩合制でありながら、基本給を設定していると、残業代の計算方法が変わり、多額の金額が発生してしまいます。
最後にもう一度繰り返しますが、完全歩合制は違法ではありません。
中途半端に基本給の項目を設けることによって、予期しない未払残業代等の請求を受ける可能性があります。
気になる方は、就業規則や給与明細を見直してみましょう。
気になる方は、就業規則や給与明細を見直してみましょう。