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働き方改革と運送業界

1億総活躍社会の実現に向けて行われた働き方改革の重要なポイントは、労働時間法制の見直しと同一労働同一賃金です。

労働時間法制の見直しの中でも、特に、残業時間の上限が定められたことが極めて重要です。

運送業は残業時間の上限規制の適用が2024年3月末まで猶予されていますが、その他の改革は既に施行されており、対応しなければなりません。

また、残業時間の上限規制が適用される2024年4月まで残された時間は少ないです。

他方で、働き方改革の具体的な内容は、多岐にわたるため、中小企業がすべて対応しようとすると、何から取り組んで良いのか分からなくなってしまいます。そこで、このページでは、運送業が働き方改革に対応する際に注意すべきポイントを分かりやすく説明します。

運送業が働き方改革に対応する際に注意すべきポイント

運送業と労働時間法制の見直し

残業時間の上限規制

働き方改革以前は、残業時間の上限は法律で規制されていませんでした。

しかし、働き方改革により、法律で残業時間の上限が定められ、これを超える残業はできなくなりました。

(大企業は2019年4月1日から、中小企業は2020年4月1日から)

具体的には、残業時間の上限は原則として月45時間、年360時間となりました。

月45時間は1日あたり2時間程度の残業に相当します。運送業では少なくとも1日2時間程度の残業があるでしょう。

1日2時間を超える残業が常態化している会社も少なくないのではないでしょうか。

2時間を超える残業は全て違法になるのでしょうか。

いいえ違います。

臨時的な特別の事情があれば上記を超える残業も可能です。

ただし、注意が必要なのは、臨時的な特別の事情がある場合でも、上限があります。具体的には以下の時間です。

つまり、臨時的な特別の事情がある場合でも、
年720時間以内
複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
月100時間未満(休日労働を含む)
を超えることはできないのです。

月80時間は一日あたり4時間程度の残業に相当します。

しかも、原則である、月45時間を超えることができるのは、年間6か月までなのです。

この上限を超えることは許されません。

1日あたり4時間程度の残業しか許されないのでは、長距離運行を中心とする運送業者は、残業時間の上限規制に違反してしまうのが実態でしょう。

こうした運送業界の実態に配慮され、運送業においては、残業時間の上限規制は、2023年3月31日まで猶予され、2024年4月から適用されることになりました。

しかも、運送業については、2024年4月からの上限規制適用後も、上限が年960時間とされています。

一般に定められる年720時間より、240時間も加算されましたが、運送業としては、「年間960時間でもきつい!」という声をききます。


特に小規模で中長距離運行に取り組んでいる会社は、相当厳しい対応を迫られます。

残業時間の上限規制に違反した場合どうなるのでしょうか。

労働基準法違反として6月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

実際、残業時間の上限規制が適用されている会社が書類送検されています。以下の記事を参考にしてください。

うまい棒の製造会社、長時間労働で書類送検 | 福岡の弁護士による運送業の相談所 (https://unsou.matsuzaka.info/)

勤務間インターバル制度の導入促進

勤務間インターバル制度とは、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に一定時間以上の休息時間インターバルを確保する仕組みです。


運送業では前日に夜遅くまで残業した後、運行先の到着時間との関係で翌朝朝早くに出勤しなければならないケースがあります。

睡眠不足などで事故が発生するリスクが高まります。

勤務間インターバル制度とはあくまで努力義務ですが、従業員の健康管理や安全運行の観点から勤務間インターバルを十分に確保するようにしましょう。

また、勤務間インターバル制度とは別に、運送業は、改善基準告示により休息時間が規制されていますので、注意が必要です。詳細は、後述します。

一人1年当たり5日間の年次有給休暇の取得を義務付け

従前は労働者が自ら申し出なければ年休を取得できませんでした。

しかし、働き方改革により、5日間の年次有給休暇の取得義務付けされました。

会社は、従業員の希望を踏まえて、年5日間は時季を指定して有給休暇を取得させることができます。

5日間の年次有給休暇の取得義務付けは運送業の適用猶予がありません。他の業界と同様に義務付けされています。

発注者や積荷の種類にもよりますが、通常、閑散期と繁忙期があると思われます。従業員の希望も踏まえて、予め年間スケジュール等を組み、5日間の有給休暇を指定することも検討しましょう

月60時間を超える残業は割増賃金率50%

月60時間越えの残業割増賃金率は、大企業は50%、中小企業は25%でしたが、働き方改革により、2023年4月から中小企業も50%となります。

中長距離運行に携わる運送会社では、月60時間を超える残業時間は珍しくないでしょう。

2023年4月からは、月60時間超の割増率25%→50%に変わることにより、残業代の負担が上がります。

運送会社としては、残業時間の上限規制との関係でも、残業時間を月60時間以下に抑えたいところです。

労働時間の状況を客観的に把握する義務

管理監督者は、時間外・休日労働の割増賃金の支払い義務がかからないため、労働時間を客観的に把握する通達の対象外でした。

しかし、働き方改革により、管理監督者を含め、すべての人の労働時間の状況が客観的な方法で把握されるよう、法律で義務付けられました。


また、労働安全衛生法により、残業が一定時間を超えた労働者から申し出があった場合、会社は医師による面接指導を実施する義務があります。

ドライバーの労働時間を客観的に把握することはこれまでも義務付けされていましたが、働き方改革により、これまで以上に労働時間を客観的に把握する要請が強くなります。

デジタルタコグラフ

運送業界においては、タイムカード、デジタルタコグラフなどにより労働時間を客観的に把握する必要があります。ほとんどの会社がデジタルタコグラフを導入しています。

万が一導入していない会社は補助金等を活用して導入することを検討しましょう。

労働時間の客観的把握義務の観点からデジタルタコグラフの導入は不可避です。

現実にはほとんどの運送会社が導入しているとは思いますが、問題はその運用です。

せっかくデジタコのシステム上、休憩時間を把握できる仕組みになっているにもかかわらず、ドライバーが休憩ボタンを適切に押さなかったり、会社においても休憩時間を管理していない事例が非常に多いです。


後述する改善基準告示において、連続運転の上限は4時間とされています。改善基準告示との関係でも、適切に休憩を取得する必要があります。もちろん、休憩時間を把握できず、拘束時間すべてが労働時間となれば、残業代の計算結果も大きく異なってきます。

当事務所では、デジタルタコグラフの運用及び労働時間の管理についても助言させていただいています。

勤怠管理ソフト

様々な会社から勤怠管理ソフトが提供されています。しかし、一般に提供されているサービスは、事務所や工場で働く、一般的な労働時間を前提に組み立てられており、運送会社のような特殊な労務実態に合った勤怠管理ソフトはほとんどありません。


お勧めのサービスはトラック運送業の勤怠管理及び給与計算をするために開発された勤怠ドライバーです。

当事務所では、完全歩合制の導入など賃金規定の改定に数多く取り組んでいますが、その際に、従前の賃金と改定後の賃金のサイズを検討するためにシミュレーションを実施する必要があります。シミレーションをする際に、勤怠ドライバーを使用すると、非常にシミュレーションがスムーズに行えます。

勤怠ドライバ―は、デジタコのデータを取り込んで、歩合給、一部歩合給、各種手当に対応した給与計算まで行うことができるため、給与計算を効率化することができます。

運送業と同一労働同一賃金

雇用形態により不合理な待遇差が生じることを防止するため、均衡待遇規定、均等待遇規定を、パート・有期・派遣で統一的に整備する必要があります。

中小企業の運送業のドライバーに関しては、パート・有期・派遣等で雇用契約を締結する事は比較的少なく、同一労働同一賃金が問題となる場面は比較的少ないでしょう。

一般には定年後の再雇用の場面において、同一労働同一賃金が問題となりますが、運送業では、ドライバー不足から定年退職後の再雇用においても、従前と同じ条件で雇用する場合が多いです。

ただし、定年後再雇用の際に雇用契約の内容を変更している会社は注意が必要です。

定年後も体力に応じて、これまでと同様に仕事ができる環境が望ましいと考えられます。

定年後再雇用における同一労働同一賃金の実現の観点からも、運送業では、雇用契約の期間や労働時間にかかわらず、働いた分だけ報われる歩合制が向いているのではないかと考えています。

木蓮経営法律事務所

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改善基準告示の対応

運送会社は「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」、いわゆる「改善基準告示」を遵守する必要があります。

改善基準告示は自動車運転者の労働の実態を考慮し拘束時間、休息期間等について基準を定めています。

拘束時間の限度、つまり休息期間の確保

拘束時間とは


拘束時間とは、始業時刻から終業時刻までの時間で、労働時間と休憩時間の合計時間を言います。

休息時間とは


休息期間とは、勤務と次の勤務の間の時間で、睡眠時間を含む労働者の生活時間として、労働者にとって全く自由な時間をいいます。


1ヵ月の拘束時間は原則として293時間が限度です。

労使協定を締結した場合には、1年のうち6か月までは、つまり半分までは1か月の拘束時間を320時間まで延長することができます。

ただし、1年間の拘束時間が3516時間(293時間× 12か月)を超えない範囲である必要があります。

多くの運送会社は320時間まで延長するための協定を作成しているでしょう。作成ていない会社はすぐに準備しましょう。

1日の拘束時間と休息期間


1日の拘束時間は13時間以内が基本です。延長する場合であっても上限16時間です。
1日の休職期間つまり勤務と勤務の間の時間は継続して8時間以上が必要です。


1日の拘束時間が改善基準告示を満たしているかどうかは、始業時刻から起算して24時間以内の拘束時間によりチェックする必要があります。

1週間における1日の拘束時間延長の回数の限度

1日の拘束時間の原則である13時間から延長する場合であっても、15時間を超える回数は1週間につき2回が限度です。

したがって片道拘束15時間を超える長距離の往復運送は1週間につき1回しかできません。

長距離運行を受託者する会社としては非常に厳しいルールであるため工夫が必要です。

休息の場所

休息期間についてはドライバーの住所地、つまり自宅での休息期間は、それ以外の場所での休息期間より長くなるように努力しなければなりません。

運転時間の限度


1日の運転時間は2日平均で5時間が限度です。


1週間の運転時間は、2週間ごとの平均で44時間が限度です


連続運転時間は4時間が限度です。

・運転開始後4時間以内又は4時間経過直後に運転を中断して、30分以上の休憩等を確保する必要があります。

この休憩時間は残業代の計算とも関わります。

ドライバーに適切に休憩を取得させ、労働時間の計算にも反映させる必要があります。

時間外労働及び休日労働の限度


時間外労働及び休日労働は1日の最大拘束時間16時間、1ヵ月の拘束時間原則293時間、例外320時間までが限度です。もちろん時間外労働及び休日労働を行う場合には、いわゆるサブロク協定を届け出る必要があります。

休日労働の限度

休日労働は、2週間に1回が限度です。

運送業の働き方改革と2024年問題まとめ

以上がトラック運転者の労働時間等の改善基準告示のポイントです。

特に中長距離運行を行っている運送会社にとって、改善基準告示は非常に厳しい基準と言えるでしょう。

働き方改革の残業時間の上限規制が2024年4月に適用されることから、改善基準告示も改定される見込みです。

残業時間の上限規制だけでなく、改善基準告示にも対応する必要があり、運送会社としては労働時間を適正に管理し、残業時間を削減する必要に迫られています。

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