運送業であれば、通常、タコグラフ(運行記録計)を車両に付け、運送作業日報を作成されていると思います。
労度者側から、残業代請求をされた場合に、タコグラフ(運行記録計)や運送作業日報の提出を求めるられることも多いのが現実です。
では、タコグラフ(運行記録計)や運送作業日報等に関するルールはどのように定められているのでしょうか。
また、保存期間はどのように考えればいいのでしょうか。
簡単に解説します。
乗務等の記録(運送作業日報等)を付ける義務
乗務等の記録(運送作業日報等)を付ける義務の対象
一般貨物自動車運送事業者等は、ドリアバーごとに、車両のナンバー、乗車開始及び終了の場所、日時、主な経過場所、休憩・睡眠の場所及び日時等を乗務に関する記録を付けなければなりません。
「日報」「運送作業日報」「運行作業日報」などと呼ばれるものです。
乗務等の記録(運送作業日報等)の保管期間
乗務等の記録(運送作業日報等)の保管期間は1年間です。
タコグラフ(運行記録計)を付ける義務
タコグラフ(運行記録計)を付ける義務の対象
すべての車両にタコグラフ(運行記録計)を付ける義務はありません。
一般貨物自動車運送事業者等は、車両総重量が七トン以上又は最大積載量が四トン以上の普通自動車である事業用自動車等は運行記録計により、瞬間速度、運行距離及び運行時間を記録しなければなりません。
運行記録計の保存期間
運行記録計の保存義務は1年間です。
タコグラフと運送作業日報等に関するポイント
運送業者は、嘉元自動車運送事業輸送安全規則に基づきタコグラフと運送作業日報等を記録し、1年間保存しなければなりません。
労働時間の詳細を立証する資料を欠く労働者側は、残業代請求する際に、運送業者にタコグラフと運送作業日報等の開示を求めます。この開示を拒否すると、証拠保全の申立てがなされる可能性が高いです。
残業代請求を恐れて、タコグラフと運送作業日報等を保管しない方が有利と考える経営者が稀にいますが、間違っています。
そもそも、未払残業代を受けないように体制を整備するとすれば、タコグラフと運送作業日報等を記録しなければ、労働時間を正確に把握することはできません。
また、残業代請求を受けた場合にも、労働時間(特に休憩時間)を明らかにするための証拠であるタコグラフと運送作業日報等は、会社側にとって有利な証拠でもあります。
したがって、規則に基づく義務である保存期間1年間に留まらず、少なくとも未払賃金請求権(残業代請求権)の時効期間である3年間は保存することをお勧めします。
貨物自動車運送事業輸送安全規則の抜粋
貨物自動車運送事業輸送安全規則に以下のとおり記載されています。
乗務等の記録(運送作業日報等)に関する規定
(乗務等の記録)
第八条 一般貨物自動車運送事業者等は、事業用自動車に係る運転者の乗務について、当該乗務を行った運転者ごとに次に掲げる事項を記録させ、かつ、その記録を一年間保存しなければならない。
一 運転者の氏名
二 乗務した事業用自動車の自動車登録番号その他の当該事業用自動車を識別できる表示
三 乗務の開始及び終了の地点及び日時並びに主な経過地点及び乗務した距離
四 運転を交替した場合にあっては、その地点及び日時
五 休憩又は睡眠をした場合にあっては、その地点及び日時
六 車両総重量が八トン以上又は最大積載量が五トン以上の普通自動車である事業用自動車に乗務した場合にあっては、次に掲げる事項
イ 貨物の積載状況
ロ 荷主の都合により集貨又は配達を行った地点(以下「集貨地点等」という。)で待機した場合にあっては、次に掲げる事項
(1) 集貨地点等
(2) 集貨地点等への到着の日時を荷主から指定された場合にあっては、当該日時
(3) 集貨地点等に到着した日時
(4) 集貨地点等における積込み又は取卸し(以下「荷役作業」という。)の開始及び終了の日時
(5) 集貨地点等で、当該一般貨物自動車運送事業者等が、貨物の荷造り、仕分その他の貨物自動車運送事業に附帯する業務(以下「附帯業務」という。)を実施した場合にあっては、附帯業務の開始及び終了の日時
(6) 集貨地点等から出発した日時
ハ 集貨地点等で、当該一般貨物自動車運送事業者等が、荷役作業又は附帯業務(以下「荷役作業等」という。)を実施した場合(荷主との契約書に実施した荷役作業等の全てが明記されている場合にあっては、当該荷役作業等に要した時間が一時間以上である場合に限る。)にあっては、次に掲げる事項(ロに該当する場合にあっては、(1)及び(2)に掲げる事項を除く。)
(1) 集貨地点等
(2) 荷役作業等の開始及び終了の日時
(3) 荷役作業等の内容
(4) (1)から(3)までに掲げる事項について荷主の確認が得られた場合にあっては、荷主が確認したことを示す事項、当該確認が得られなかった場合にあっては、その旨
七 道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第六十七条第二項に規定する交通事故若しくは自動車事故報告規則(昭和二十六年運輸省令第百四号)第二条に規定する事故(第九条の二及び第九条の五第一項において「事故」という。)又は著しい運行の遅延その他の異常な状態が発生した場合にあっては、その概要及び原因
八 第九条の三第三項の指示があった場合にあっては、その内容
2 一般貨物自動車運送事業者等は、前項の規定により記録すべき事項について、運転者ごとに記録させることに代え、道路運送車両の保安基準(昭和二十六年運輸省令第六十七号)第四十八条の二第二項の規定に適合する運行記録計(以下「運行記録計」という。)により記録することができる。この場合において、当該一般貨物自動車運送事業者等は、当該記録すべき事項のうち運行記録計により記録された事項以外の事項を運転者ごとに運行記録計による記録に付記させなければならない。
タコグラフに関する規定
(運行記録計による記録)
第九条 一般貨物自動車運送事業者等は、次に掲げる事業用自動車に係る運転者の乗務について、当該事業用自動車の瞬間速度、運行距離及び運行時間を運行記録計により記録し、かつ、その記録を一年間保存しなければならない。
一 車両総重量が七トン以上又は最大積載量が四トン以上の普通自動車である事業用自動車
二 前号の事業用自動車に該当する被けん引自動車をけん引するけん引自動車である事業用自動車
三 前二号に掲げる事業用自動車のほか、特別積合せ貨物運送に係る運行系統に配置する事業用自動車