出来高払制・歩合制のドライバーの時間外割増賃金(残業代)の割増率と残業代の計算方法
出来高払制・歩合制のドライバーの時間外割増賃金(残業代)の計算をどうしたらいいのかという相談を受けることが多いです。
出来高払制や歩合制の場合の割増率
出来高払制や歩合制の場合、割増率については、厚生労働省が平成11年3月31日基発168号等により回答しているとおり、延長した労働時間数もしくは休日労働時間数にそれぞれ125%、135%を乗じる必要はなく、それぞれ25%、35%を乗じるだけで足ります。
割増率の1の部分は出来高・歩合給に含まれていると考えるわけです。
したがって、完全出来高払制・歩合制を導入している運送会社は多いのですが、歩合給に残業代をが含まれるとして、残業代を支給しておらず、後にトラブルとなることが多いです。
完全出来高払制・歩合制でも、上記の割増率に基づいて残業代を計算して支払えば、残業代が高額になることもなく、未払残業代の請求を受けることもありません。
割増賃金の計算方法
出来高払制・歩合制の割増率は上記のとおりであるとして、割増賃金の基礎はどのように計算するのでしょうか。
通常の賃金に対する割増賃金の計算方法と異なり、出来高払制・歩合制の割増賃金の基礎は、出来高給・歩合給の総額を総労働時間で割って算出します(労働基準法施行規則則19条1項6号)。
出来高給・歩合給の総額 ÷ 総労働時間
完全歩合制は運転手の意欲を高め、ダラダラ残業を抑制すること
例えば、完全歩合制で、月の歩合給が35万円、月間の総労働時間が200時間の場合、次のとおりとなります。
35万円÷200時間=1750円
1750円×0.25(割増率)=437.5円
上記のとおり完全歩合制の場合、1時間あたりの残業代は437円となります。
仮に基本給と手当の合計35万、月平均所定労働時間160時間の場合、1時間あたりの残業代は、2,734円となります。
35万円÷160時間=2187.5円
2187.5円×1.25(割増率)=2734.375円
1時間あたりの残業代を比較すると、完全歩合制の437円は、2,734円の16%にすぎません。
一般的に、完全歩合制の方が、頑張った運転手が報われる制度といえるでしょう。
また、完全歩合制の方が残業代の単価が安くなり、上記の例では437円です。運転手は、ダラダラと仕事をするより、効率的に仕事をして売上を上げて歩合給を稼ごうと考えるため、ダラダラ残業が抑制されます。
歩合制には上記のメリットがあります。従前の賃金制度、業務内容次第、従業員の意向次第ではありますが、歩合制度の導入を検討する価値はあると考えます。