目次
Q & A 定時出勤時間を基準に労働時間を算出する?
荷卸し後に作業指示を待つ時間を休憩時間とした事例
事時の概要
- 運送会社の長距離トラック運転手が解雇された後に、解雇予告手当、休業手当、残業代を請求
- 業務内容は、トラックを用いて,数日間にわたり長距離輸送に従事するもの
- 業務形態は、運送会社の事業所(大阪府四條畷市所在)を出発して,大阪市又はその周辺地域の集配先で荷物を積んで,関東地方,東北地方等まで運送して,配送先で荷物を降ろした後,同地方等の集配先で荷物を積んで,大阪市又はその周辺地域まで運送して,配送先で荷物を降ろし,事業所に帰るというもの
- 運転手は,運送会社の事業所を出発してから帰社するまでの間を1乗務として,運転日報(〈証拠略〉)に,その都度,運行状況(運行の日程,積地・卸地,走行距離等),乗務員点呼,運行前点検の各状況等を記載していた。
(旭運輸事件・大阪地判H20.8.28 労判975号21頁)(残業代請求以外の請求にかかる事実関係は省略)
裁判所の判断(始業時刻について)
上記事件の裁判所は、実労働時間の始業時刻について、次のとおり判示しました。
出発日の出庫時刻は,タコグラフで認められる運行開始時刻,出発前の準備に要する時間等を考慮して定める。原告が定時(午前8時30分等)に出勤していたことを認めるに足りる的確な証拠はなく,仮にそうであったとしても,出勤後,出発前の準備に入るまでの間,原告が業務に従事すべき状況にあったことを認めるに足りる証拠がなく,したがって,上記出勤時刻を出庫時刻とすることは,割増賃金の算定上相当でない。
○○のポイント
労働時間を算出するために始業時刻と終業時刻は、実際に労働、つまり、指揮命令下にあった時刻で認定されます。
タコグラフ等の客観的記録に基づき認定されることがほとんどです。
就業規則で定められている始業時刻に従って、実労働時間が算定されるわけではありません。
労働の実態がある場合に実労働時間として認定されるわけですね。
労働者側は、タコグラフの稼働時開始時刻以前から準備のために労働していた、タコグラフの稼働終了時刻後も片付け作業をしていたなどと労働者が主張することもありますが、単に主張するだけでなく、立証する必要があります。
なるほど。交渉段階でも、労働者側の残業代算出の前提となる労働時間については、丁寧に検討して会社側の主張に基づき労働時間を算出して、回答する必要があるということですね。
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労働基準法抜粋
(労働時間)
第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
② 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。