作業服等に着替えるための時間は労働時間? 労働時間とは
残業代を計算する際に、どれだけ労働時間があったのかが問題になりますが、出社後、仕事をするために作業着に着替えるように指示していた場合、着替えの時間は労働時間にあたるのでしょうか。労働時間をどのように判断したらいいのでしょうか。
結論としては、会社側が、出社後に業務のために作業着に着替えるように指示していた場合には、労働時間にあたると判断される可能性が高いです。
なぜ、そのように考えられるか簡単に解説します。
労働時間の判断基準に関するリーディングケース
労働時間の判断基準に関するリーディングケースとして、最高裁判所(三菱重工長崎造船事件)があります。
三菱重工長崎造船所事件では、会社側は、就業規則に、始業前の準備と終業後の片づけ等について、次のとおり定めていました。
また、労働時間については次のとおり定めていました。
こうした就業規則の定めからすれば、業務の前後の着替え時間は労働時間に含まれないように思えます。
就業規則の記載内容ではなく、労働実態に着目すべき
しかし、最高裁判所は、労働時間の意義について、次のとおり判断して、就業規則の記載内容ではなく、労働実態に着目すべきとしたのです。
それは驚きです!就業規則に定めて、それをもとに会社側は動いていたので、うちは大丈夫かと思っていました。
そうですね。実態に即した就業規則にしていないと、実態に着目されて、残業代請求をされ、相当マズいことになることがあるんです。就業規則よりも、実態、ということですね。
続けて裁判所の判断を見てみます。
「労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるものではない。」
準備や片付け時間は労働時間にあたると判断
そして、具体的な事案の結論として、準備や片付け時間は労働時間にあたると判断したのです。
(※ 準備や片付け時間が必ず労働時間にあたるというわけではありません。この事案において労働時間にあたると判断したものです。)
「労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、当該行為に要した時間は、それが社会通念上必要と認められるものである限り、労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)三二条の労働時間に該当する。」
指揮命令下にあるかどうかが重要
ポイント:指揮命令下にあるかどうかが重要です。
就業規則や雇用契約書に着替え時間は労働時間として扱わないと記載していても、業務のための準備として事業所において着替えを命じていた場合には、労働時間と扱わざるを得ないということです。
うーん。厳しいですね、、、。
業務開始前後の準備行為にかかった時間について残業代請求されるケースがあります。
つまり、労働時間として扱うべきかは、指揮命令下にあったか否かを実態を踏まえて判断することになります。
就業規則が実態に合っていないかもしれない、と思われた方はぜひご相談下さい。初回相談無料実施中です。
事務局が丁寧に対応致しますので、お気軽にご記入下さい。
無料相談・お問い合わせ
参考サイト:三菱重工長崎造船所事件 最高裁平成12年3月9日判決 裁判例結果詳細 | 裁判所 – Courts in Japan