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歩合給(出来高)の支給と残業代の支払

目次

Q & A 歩合制の場合に別途残業代を支払う必要があるのか?

A. 歩合給が、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外・深夜の割増賃金に当たる部分とを区別できない場合、歩合給の支給によって残業代(割増賃金)を支払ったとすることはできません。

歩合給に残業代が含まれるとの主張が認められなかった事案

事案の概要

  • 完全歩合制を採用するタクシー会社の元従業員らが、未払残業代を請求した事件
  • 勤務条件
    • 労働時間:午前八時から翌日午前二時まで(そのうち二時間は休憩時間)。全員が隔日勤務。
    • 賃金:1か月間の稼働によるタクシー料金の月間水揚高に一定の歩合を乗じた金額
    • ドライバーが労働基準法37条の時間外及び深夜の労働を行った場合にも、歩合給以外の賃金は支給されておらず、歩合給のうちで、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分とを判別することはできなかった。

(最判H6.6.13・高知県観光事件・労判657号6頁)

裁判所の判断 

争点

完全歩合制に基づく歩合給の支給が残業代(割増賃金)の支払として認められるか。

本件の歩合給の時間外労働に対する対価性

本件請求期間に上告人らに支給された前記の歩合給の額が、上告人らが時間外及び深夜の労働を行った場合においても増額されるものではなく、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分とを判別することもできないものであった

本件の歩合給は、1か月間の売上に対する一定割合とされていただけで、時間の要素が一切含まれていませんでした。そのため、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分とを判別することもできないと判断されたものです。

本件の歩合給は労基法37条の割増賃金と認めらられない

この歩合給の支給によって、上告人らに対して法三七条の規定する時間外及び深夜の割増賃金が支払われたとすることは困難なものというべきであり、被上告人は、上告人らに対し、本件請求期間における上告人らの時間外及び深夜の労働について、法三七条及び労働基準法施行規則一九条一項六号の規定に従って計算した額の割増賃金を支払う義務があることになる。

歩合制と残業代のポイント

完全歩合制を採用しつつ、歩合給に残業代が含まれるとの理解に基づき賃金を支払っている運送業者は未だ少なくありません。

しかし、少なくとも、本件のように歩合給が売上の一定割合とされているような場合、残業代を支払っているとは認められません。

早急に賃金制度を変更しましょう。

歩合給の一部や各種手当に残業代が含まれるという賃金制度はすべて認められないのでしょうか。

最近の最高裁判決も、歩合給から割増賃金相当額を控除する制度を否定したと聞きました。

国際自動車事件(第二次上告審)最判R2.3.30ですね。

最高裁は、同事件において、売上等の一定割合に相当する金額から割増賃金に相当する金額を控除する制度について、割増賃金のどの部分が時間外労働の対価なのか明確ではないとして、残業代の支払として認めませんでした。

ただし、手当の計算において割増賃金に相当する金額を利用する仕組みが採用されていたトールエクスプレスジャパン事件(大阪高判R3.2.25労判1239号5頁)は、割増賃金と通常の労働時間の賃金とが判別されているとして、未払残業代の請求を否定しました。

問題は通常の労働時間の対価部分と残業の対価部分が明確に区別されているか否かです。

労働基準法に従った計算方法以外の割増賃金の支払が違法というわけではありませんが、同法に従った計算方法以外を採用している運送会社は、判例の動向も見据えながら対応することが必要です。

効率の向上のために、賃金制度を工夫したいのですが、難しいのですね。

確かに難しいです。

しかし、国際自動車事件(第二次上告審)最判R2.3.30後に重要な高裁判決が出ています。

手当の計算において割増賃金に相当する金額を利用する仕組みが採用されていたトールエクスプレスジャパン事件(大阪高判R3.2.25労判1239号5頁)は、割増賃金と通常の労働時間の賃金とが判別されているとして、未払残業代の請求を否定しました。

問題は通常の労働時間の対価部分と残業の対価部分が明確に区別されているか否かです。

労働基準法に従った計算方法以外の割増賃金の支払が違法というわけではありませんが、同法に従った計算方法以外を採用している運送会社は、判例の動向も見据えながら対応することが必要です。

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関連条文・文献

労働基準法抜粋

(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
② 前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。
③ 使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項ただし書の規定により割増賃金を支払うべき労働者に対して、当該割増賃金の支払に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(第三十九条の規定による有給休暇を除く。)を厚生労働省令で定めるところにより与えることを定めた場合において、当該労働者が当該休暇を取得したときは、当該労働者の同項ただし書に規定する時間を超えた時間の労働のうち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定める時間の労働については、同項ただし書の規定による割増賃金を支払うことを要しない。
④ 使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
⑤ 第一項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。

労働基準法施行規則

第十九条 法第三十七条第一項の規定による通常の労働時間又は通常の労働日の賃金の計算額は、次の各号の金額に法第三十三条若しくは法第三十六条第一項の規定によつて延長した労働時間数若しくは休日の労働時間数又は午後十時から午前五時(厚生労働大臣が必要であると認める場合には、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時)までの労働時間数を乗じた金額とする。
一 時間によつて定められた賃金については、その金額
二 日によつて定められた賃金については、その金額を一日の所定労働時間数(日によつて所定労働時間数が異る場合には、一週間における一日平均所定労働時間数)で除した金額
三 週によつて定められた賃金については、その金額を週における所定労働時間数(週によつて所定労働時間数が異る場合には、四週間における一週平均所定労働時間数)で除した金額
四 月によつて定められた賃金については、その金額を月における所定労働時間数(月によつて所定労働時間数が異る場合には、一年間における一月平均所定労働時間数)で除した金額
五 月、週以外の一定の期間によつて定められた賃金については、前各号に準じて算定した金額
六 出来高払制その他の請負制によつて定められた賃金については、その賃金算定期間(賃金締切日がある場合には、賃金締切期間、以下同じ)において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における、総労働時間数で除した金額
七 労働者の受ける賃金が前各号の二以上の賃金よりなる場合には、その部分について各号によつてそれぞれ算定した金額の合計額
② 休日手当その他前項各号に含まれない賃金は、前項の計算においては、これを月によつて定められた賃金とみなす。

参考になる文献・サイト

固定残業代 を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。(厚生労働省)

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この記事を書いた人

松坂典洋
弁護士・社会保険労務士
運送業に特化する福岡の弁護士・社会保険労務士です。
20代前半、京都で人力車を引いていました。
就労実態が労基法や就業規則と整合しないことから、トラブルを抱えた運送業者様から多くの残業代請求事件等の依頼を受けています。
人力車のお客様に対するサービス同様にクライアントにも満足して頂けるように誠実に対応するのがモットーです。
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